ヤングケアラーとは  ~子どもが子どもでいられる街~

おせっかいナースの提案

ヤングケアラーとは? 

私たちは日常生活の中で、想像もつかないことがたくさんあります。

気が付かないってことは、「情報が入ってこないため知らない」「関心がない」等…という理由で、意識できないので、無意識に通り過ぎていくことが殆どかもしれません。

 私は最近、ヤングケアラーについての学びをさせていたのですが、一般的にヤングケアラーという言葉は、聞きなれない言葉ですし、認知度はまだまだ低いようです。

それゆえ、言葉は聞いたことがあったとしても、深く知る機会が少なく、ヤングケアラーというワードが表面的な知識だけで終わったり、差別的意味合いに捉えられたりすることもあるようです。

ヤングケアラーとは

ヤングケアラーを知ることから始める

 ヤングケアラーという言葉を聞いたことがありますか?

厚生労働省のHPを見ればわかりやすく書かれているので、あえて私が説明することでもないのですが、「本来、大人が担うと想定する、家事や家族の世話などを日常的に行っている18歳未満の子供」のことをいいます。18歳から30代までのケアラーは「若者ケアラー」「ヤング・アダルト・ケアラー」と呼ぶそうです。

国によって年齢の定義が変わるそうです。

厚労省HP:  

子どもが子どもでいられる街に。~ヤングケアラーを支える社会を目指して~ 【厚生労働省】
子どもが子どもでいられる街に。ヤングケアラーが「自分は一人じゃない」「誰かに頼ってもいいんだ」と思える、「子どもが子どもでいられる街」を、みんなでつくっていきませんか。

ヤングケアラーという言葉は、日本では法律的に定義されたものではなく、このワードを通じてヤングケアラーの現状を伝えていくためのツールとして使い、子供達への支援をもっと知ってもらうのが目的なんだそうです。子供をラベリングするものではない、ケアしている行為がかわいそうなことと決めつける事はできません。

 日本では早くて就学前後からの子どももいるそうで、中学生、高校生になるとその割合はグッと増えます。2021年の厚労省調査によれば、中学生は17人に1人、高校生は24人に1人の割合で、その多くが小学生高学年頃から始めているケースが殆どという結果が出ています。

差別にならないための理解

 ヤングケアラーという言葉がひとり歩きして、その理解が浅いと、子どものいじめ、差別にも繋がりかねません。

ヤングケアラーは、周りの人が気付かないことが多く、子ども自身もそれが家庭での役割として当たり前と感じて気が付かない場合や、辛くてもどこに相談をすれば良いかを知らないケースも多くあると言われています。

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ケアとお手伝いとの違い

ヤングケアラーは、家での「お手伝い」という認識の境界線が曖昧になることも多いそうです。

「ヤングケアラーが担うケア」と「お手伝い」の違いは、

担うケアの内容、状況、時間、頻度、責任の度合いが違い、「自分がケアしないと家族の命や生活に直結するため、年齢や成熟度に合わない責任の重い作業を、やらないという選択ができない状況」である点にあります。

【ヤングケアラーが担う役割】

  • 家事全般…障害や病気のある家族に代わり、買い物、料理、掃除、洗濯など
  • きょうだいの世話…家族に代わり、幼いきょうだいの世話
  • 見守り、声掛け…障害や病気のあるきょうだい、目を離せない家族の見守りや声掛け
  • 通訳…日本語が第一言語ではない家族や障害のある家族のために通訳
  • 家計の支え(勤労)…病気や障害のある家族を助けるため、働いている
  • 依存症への対応…アルコール、薬物、ギャンブル問題を抱える家族に対応
  • 看護、介護…服薬、たんの吸入、体位交換などの看護、排泄や入浴の世話、清拭、食事、移動介助などの介護

様々な家庭環境

 当然ながら、その子のご家庭の状況はきちん把握できるわけではありません。ヤングケアラーの存在に気が付き、相談にのったとしても、それ以上踏み込んでいくには素人には難しいため、専門家が介入することにより解決していく必要があります。

子供が置かれた環境を想像するには、どういったケースがあるのか少しでも知ると、ヤングケアラーの背景を理解することに繋がります。

  • 両親の病気:精神疾患、薬物依存、持病の悪化による体調不良で大人が家事をしない。同居家族に障がいを持つきょうだいがいる。など
  • 介護:両親がおらず祖父母と暮らす子供が、祖父母の介護を担う

周りの大人が気づいてあげる

 私は看護師ではありますが、ヤングケアラーの知識はなかったし、周りにそのような子供がいるという事を意識したことがありませんでした。

ヤングケアラーには次のような様子が見られることが多く、困っていても「助けて」といえずにいる子供が存在するため、周りの大人はちょっとした事でも、

気が付いたときに声をかけてあげることが必要とされています。

・学業への影響:遅刻、早退、欠席が増える

        宿題、課題の提出ができない

        部活、サークルへの参加ができない

・人との関りがなくなり、孤独を感じる

・健康状態が悪い:睡眠不足や生活のリズムの崩れから体調不良

 

子供が安心して相談できる関係作り~私たちができること~

 まず、大人はヤングケアラーについての基本的な知識を持つことが大切です。

そして、ヤングケアラーかな?と気が付いたときは、

普段から関りがある子供なら、声をかけやすいのですが、そうでない場合は、少しずつ関りを持ちながら、「この人には相談しても大丈夫」という安心をもってもらえるよう、挨拶や、「どうしたの?何か心配なことがある?」など、ちょっとでもいいので、機会があるごとに声掛けをしていくことが良いようです。

もし悩みを話し始めても、急いで解決しようとはしないで、まずは子供の気持ちや状況を把握していくこと、話をじっくり聞いて寄り添い、そして学校の教師やスクールソーシャルワーカーに繋ぐことをおススメします。また必ず秘密厳守とし、子供が安心・安全に生活していけるように専門の支援者に繋いでいくことが大切です。 

支援者としてどうするか

 ヤングケアラーへの支援としては、専門家以外の方がどう支援していけばよいのでしょうか。

まずはヤングケアラーを知ることから始まり、専門家に繋いでいくことが一番ですが、どこに連絡していけばいいのか、わからないと思います。
私もヤングケアラーの講義を受けるまでは、日常に意識することは無く専門機関や支援団体を知ることは無かったと思います。
 
 県によっては、ヤングケアラーがどこへ相談すればよいかがわかるカードを、学校から子ども達に配布をしています。
大人は、どういう支援がありどこに連絡したらよいかを、教えてあげる必要があります
直接大人に相談したくないという子もいると思います。
子供が自分で電話をすることもあるので、連絡先も教えてあげるなどをしてあげると良いと思います。
 

自分自身の学びをしてみる

 社会福祉活動にとても関心があり、支援者として働いてみたいという方がいるかもしれません。
私はこれまでに直接かかわった経験はありませんが、機会がある場合スキルアップとしても自己学習は必要だと感じています。特に、病院でのケアではなく街に出て暮らすかたへの支援は、また難しいことも多く、特にご家庭の状況に踏み込んでの支援や、ご家族の健康状態へのアプローチについては専門的に学ぶ必要があると思います。

 日本では、少子高齢化、ひとり親世帯の増加などにより、ますますヤングケアラーが増えるのではないかといわれています。


 そして、年々増加傾向にある障がいを持つ方へのアプローチについては、一般のボランティアでは対応できないため、ヤングケアラーへの支援活動には、知識と経験が求められると思います。
令和元年の内閣府調査では、身体障がい者は約436万人、知的障がい者は約108万2千人、そして精神障がい者は約419万3千人といわれています。すなわち、国民のおよそ7.6%が何らかの障がいを有しているという調査結果です。

 ヤングケアラーが抱える問題は、単に家事労働などの負担だけでない複合的に抱えるものは多いと思います。そのご家庭の保護者の問題も合わせた解決と、子どものこころのケアも必要となってくるでしょう。

専門家でも対応に困る場合がある

 子どもと接する機会が多いのは学校の先生ですが、意外と学校の先生もヤングケアラーについての対応に戸惑う方が多いそうです。また、介護施設を利用している高齢者との関りからヤングケアラーに遭遇する事も多く、介護福祉士やケアマネなども、ヤングケアラーと接する機会があります。
 そういった場合、研修を受けるか独自で学ぶことが、ヤングケアラーへの理解と支援に繋がります。

寄付という支援

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